母と2人3脚で走ったアートの道:亡き母へささぐ

亡き母にささぐ個展 2016年1月
発達障害と視野が狭くなる難病を抱えな がらも色彩豊かな仏画を描く北九州市八幡 西区の絵師、本村卓空(本名・卓也)さん (33)が、東京・丸の内で個展を開いている。 東京での個展は、二人一=脚で創作活動に取 り組んできた母、照美さんの悲願だったが、 約1か月前に57歳で急逝した。卓空さんと 家族は悲しみを乗り越え、「個展の成功を 天国の母にささげたい」
としている。 (山根秀太)
卓空さんは幼少期から意 思疎通が苦手で、中学校で 不登校に。その後、発達障 害と診断され、視野が狭く なる進行性の難病・網膜色 素変性症も患った。今では 視野のほとんどを失ってい る。ただ、絵を描くのが好 きで、2009年に照美さ んが画材をプレゼントした ところ、誰から教えられる わけでもなく、神仏の絵を 描き始めたという。 「人と話さず、目もほと んど見えませんが、何かに救いを求めるように、 仏の姿を描き続けている ようです」と父・哲也さん (62)。卓空さんが神仏を描 く本当の理由は、家族にも わからないという。 昨年12月5日、初の作品 集「画集・卓空の世界祈 り」(日貿出版社)を出版。 これまでに描いた約200 点の作品の中から、仏画や一心ーキリスト教の聖人を描いた作品など47点を載せた。作品には、照美さんが20年以 上趣味で続けていた俳旬を載せている。個展は、この出 版記念として企画された。
ところが出版の8日後、突然悲報が届いた。俳句の会合で大阪に行っていた照美さんが就寝中にホテルで亡くなった。就寝中に突然心臓が止まる突然死だったという。「個展に向けて東 京と北九州を飛び回っていたのに……。今でも信じら れない」と哲也さんは肩を 落とす。卓空さんも塞ぎ込 んだような様子だったが、 筆を置くことはなく、絵に 向き合った。告別式などで 慌ただしい中、哲也さんと 個展の準備を進めた。 「完全に失明してしまう 前に、少しでも多くの人に 絵を見てもらい卓空の世界 観を感じてほしい」。そんな親心から、照美さんは生前、 「東京で個展を成功させた い」とロ癖のように話していたという。哲也さんは「妻 は『同じ病気に悩む人たちを励ましたい』とも語って いた。多くの人に足を運んを、絵の説明文とともに添一でほしい」と話している。